バレンタイン前日の話。 [小説]
イラストが描けなかったので小話でもー。
前日の話なんだから昨日あげとけって話ですよね!
うん、自分でもあげる順番間違えたなとは、思った……。
最近何やら緋鈴お嬢や火夏さん、さらにはすてら嬢までもが遊びに来て何か慌ただしくしているようだった。甘ったるいチョコレートの匂いがして、一体みんなで何をしているのかと給仕のポフに尋ねるとどうやらもうすぐバレンタインだとのことで。
(ああ、お嬢と火夏さんは旦那にあげるのか……)
こっちに怪しいものが回ってこないようで何よりだとうぉるとは中庭へと移動する。
中庭にある東屋にばじるが居座っているのを見つけた。
「よぉ」
「おや、うぉるとしゃん。どうしたんでしゅか」
丸いテーブルを挟んで、ばじるの向かいの椅子に腰かける。
「もうすぐバレンタインなんだな、と思って」
「ああ……そういえばもうそんな時期でしゅか」
二人はそろって遠くの空を見やる。
「「にーるにチョコを献上しなければいけない時期……」」
うぉるとはテーブルに肘をつき、うなだれる。
「……普通、普通さあ、逆じゃねえのこれ」
「言ったらダメでしゅ。もう毎年恒例なんだから諦めるでしゅ。がんばれうぉると」
「なんで大好きな甘いものわざわざ他人にあげなきゃいけねえんだよ!! そのくらいなら自分で食うわ!!!」
テーブルをバン、と勢い良くたたきうぉるとはばじるに食ってかかる。
ばじるは耳をふさいでうぉるとを一瞥した。
「けど律儀に毎年毎年あげてましゅよね。別にあげなくても何も言われないと思いましゅけど」
実際ばじるは『なんで僕がそんなこと』と言ってにーるにチョコなんか渡してはいない。
そして、にーるから催促が来たり文句を言われたことはない。
「まあ、そうなんだけどな……」
うぉるとはため息をついてもごもごと喋る。
「一応昔助けてもらったわけだし、日ごろの感謝とか……」
「日頃の感謝……」
そのワードに少しばかりばじるは最近のにーるの様子を振り返って見る。
「……………部屋から動いてない気がするんだけど、日ごろの感謝ってある?」
「……………ないな」
最近のにーるは引きこもってゲームをしているばかりのニートである。
どうでもいいが珍しく部屋からでてきたにーるに「希少種だー!」と叫ぶのがなかなか楽しい。
「……うぉるとの好きな人って実はにーるだったり」
「しねぇよ。ばーか」
「おや。残念、つまらんでしゅ」
まあ違うことくらいなんとなくわかってたけど、と心の中でつぶやく。
うぉるとが腕を組んで、首を少し傾げて話す。
「んー……なんていうかにーるは好きな人って言うんじゃなくて……友達? でもなくて、こう」
「多分、家族みたいなものなんだよ」
うん、それだ。家族だな。とうぉるとは自分で言った言葉にうんうんと頷いている。
頷くうぉるとの顔が、少しだけ微笑んでるように見えた。
「……ああ、そういえばにーるしゃんから伝言でしゅ」
「え、なに」
「『今年は生チョコが食べたいです』」
「…………渡さなきゃいけないフラグしか俺には見えないんだけど」
「奇遇でしゅね。僕もでしゅ」
逆チョコ! ハッピーバレンタイ、ン?
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